日本笑い学会三重支部 投稿広場 6号
公開日:2023年11月02日 最終更新日:2023年11月02日
人間には真似の出来ない巣づくり
便所の窓から月をば眺めこれがほんとの運の尽き
という、実に秀逸な句がございますが、わたしはクモを眺めた。雲ならそれなりの風情もございましょうが、虫の蜘蛛でございます。
巣をこさえている最中でした。これが見事なもので、8本の足、後ろ足はお尻からの糸を手繰って縦糸に接着、中の足は糸をつかんで体を支え、前足は前方に伸ばして進む、細くて短い足は…それなりに何かをやっている。ロボットやAIなどが進化したといっても、蜘蛛の巣作りは真似のできない“業(わざ)”でございましょう。
わたしはこの蜘蛛を「陣十郎」と名付けました(年寄りにしかわからない。年取っててよかった…)。後日、写真のような立派な巣が出来上がりました。
陣十郎、ごめん!わたしはもう一度巣作りが見たいと、この巣を壊しました。陣十郎は、ぼう然として垂れた糸にしがみついていました。
翌朝、跡形も残さず、陣十郎はどこかに行きました。正に「クモ隠れ」やなー!
(藤木 順平)
写真について:クモの嫌いな人「ごめんなさい!」